体温が変わると、腸内細菌も変わるのでしょうか?世界で進む「温度と腸」の研究

体温が変わると、腸内細菌も変わるのでしょうか?世界で進む「温度と腸」の研究

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    体温が変わると、腸内細菌も変わるのでしょうか?

    「腸活」と聞くと、ヨーグルトや発酵食品、食物繊維など、「何を食べるか」を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。

    もちろん、食事と腸内環境の関係は重要な研究テーマです。

    しかし世界の研究に目を向けると、もう少し意外な角度から「腸」が研究されています。

    その一つが、

    「温度と腸内細菌」

    です。

    私たちの腸は、一つの「生態系」

    人間の腸には、多種多様な微生物が暮らしています。

    腸内細菌という言葉から「身体の中に菌がいる」という程度に考えがちですが、もう少し視点を広げてみると、腸は微生物にとっての「生活環境」でもあります。

    そこには、

    ・栄養
    ・酸素濃度
    ・pH
    ・水分
    ・他の微生物
    ・宿主である人間の状態

    など、さまざまな環境条件があります。

    そして当然ながら、そこには「温度」もあります。

    考えてみれば当たり前のことなのですが、この視点で身体を眺める機会はあまりありません。

    「人間の体温は37℃」は、少し大ざっぱ

    私たちはしばしば、

    「人間の体温は37℃前後」

    と考えます。

    しかし、実際の体温は一日中同じではありません。

    朝と夜でも変わりますし、活動、睡眠、年齢、環境温度などによっても変動します。

    さらに「体温」と一言で言っても、身体内部の深部体温と皮膚表面の温度は同じではありません。

    つまり私たちの身体は、常に一つの固定された温度で存在しているわけではないのです。

    世界では「温度と腸内細菌」が研究されている

    この「温度」が腸内細菌とどのような関係を持つのかについて、世界では研究が行われています。

    2019年に発表されたレビューでは、環境温度や熱ストレスによって腸内細菌叢の構成が変化すること、また複数の動物種で身体内部の温度変化と腸内細菌叢の変化との関連が報告されていることが整理されています。

    2021年のレビューでも、低体温・高体温などの身体温度の変化が、さまざまな動物で腸内細菌の多様性や安定性に影響する可能性が検討されています。

    そして2023年、Nature Communicationsにはさらに興味深い研究が発表されました。

    マウスを36℃の高温環境に置いて体温を上昇させたところ、腸内細菌の活動や胆汁酸代謝などに変化が生じることが報告されています。

    「身体の温度」と「腸内微生物」は、まったく別々の世界ではない可能性がある。

    そんな研究が進んでいるのです。

    では「温めれば腸内環境が良くなる」のか?

    ここで非常に重要なことがあります。

    現段階では、「人間は身体を温めれば腸内環境が良くなる」と結論づけることはできません。

    紹介した研究の多くは動物を対象としたものです。

    マウスで起きたことが、そのまま人間でも起きるとは限りません。

    また、

    「温度が変わったため腸内細菌が変わった」

    のか、

    「身体全体の代謝や食事量、ホルモンなどが変わった結果として腸内細菌も変わった」

    のかを切り分けることも簡単ではありません。

    科学では、

    「関係がありそう」

    と、

    「原因である」

    はまったく違います。

    健康に関する情報だからこそ、この線引きは大切にしたいとアップワンは考えています。

    面白いのは「逆方向」の研究もあること

    さらに興味深いのは、

    「温度が腸内細菌を変える」だけではなく、「腸内細菌が身体の温度調節に関係するのではないか」

    という逆方向の研究も行われていることです。

    寒冷環境に置かれたマウスでは腸内細菌叢に変化が起こり、それが熱産生に関係する可能性を示した研究があります。

    つまり研究の世界では、

    温度 → 腸内細菌

    という一方向だけではなく、

    腸内細菌 → 身体の代謝・熱産生

    という双方向の関係まで研究され始めています。

    これもまだ、そのまま人間の日常生活に当てはめられる話ではありません。

    しかし、人間の身体を考えるうえで非常に興味深い視点です。

    身体は「部品の集合」ではなく、生態系なのかもしれない

    健康情報は、ときに身体を細かく分けすぎます。

    腸には腸活。

    睡眠には睡眠対策。

    体温には温活。

    運動には運動。

    しかし実際の身体の中では、それらは完全に独立して存在しているわけではありません。

    体温には一日のリズムがあり、睡眠とも関係しています。

    食事にも時間があります。

    そして腸には、膨大な微生物が暮らしています。

    人間の身体を単純な「部品の集合」としてではなく、

    人間と微生物、温度、光、食事、睡眠、活動が互いに関係する一つの生態系

    として眺めてみる。

    そうすると「健康」という言葉の見え方も、少し変わってくるのではないでしょうか。

    私たちアップワンは、温熱に携わる会社だからこそ、

    「温めれば何でもよい」

    という情報をお伝えするのではなく、世界で何が研究され、何が分かっていて、何がまだ分かっていないのかまで含めて、これからもご紹介していきたいと考えています。

    次回は、

    「腸内細菌は、朝と夜で同じなのでしょうか?」

    というテーマです。

    「腸活=何を食べるか」だけではない、時間と腸内細菌の研究をご紹介します。


    参考にした主な研究

    ・Hylander BL, Repasky EA. “Temperature as a modulator of the gut microbiome.” 2019.

    ・Huus KE, et al. “Blowing Hot and Cold: Body Temperature and the Microbiome.” 2021.

    ・Nagai M, et al. “High body temperature increases gut microbiota-dependent host resistance to influenza A virus and SARS-CoV-2 infection.” Nature Communications, 2023.

    ・Worthmann A, et al. “Cold-induced conversion of cholesterol to bile acids in mice shapes the gut microbiome and promotes adaptive thermogenesis.” Nature Medicine, 2017.

    ※本記事は健康や疾病に対する治療・予防効果を示すものではなく、公開されている研究をもとに、体温と腸内細菌に関する研究動向をご紹介するものです。