腸内細菌は、朝と夜で同じなのでしょうか?世界で進む「腸と時間」の研究

腸内細菌は、朝と夜で同じなのでしょうか?世界で進む「腸と時間」の研究

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    腸内細菌は、朝と夜で同じなのでしょうか?世界で進む「腸と時間」の研究

    「腸活」と聞くと、何を思い浮かべるでしょうか。

    ヨーグルト。
    発酵食品。
    食物繊維。
    乳酸菌。

    私たちはこれまで、

    「何を食べるか」

    という視点から腸内環境を考えることが多くありました。

    ところが世界の研究では、もう一つ興味深い問いが研究されています。

    それが、

    「いつ食べるか」

    です。

    なぜ、食べる“時間”が腸と関係するのでしょうか。

    その背景にあるのが、

    私たちの身体が持つ「約24時間のリズム」

    です。


    私たちの身体は、24時間ずっと同じではない

    朝になると目が覚める。

    昼は活動する。

    夜になると眠くなる。

    これは、単に生活習慣の問題だけではありません。

    私たちの身体には、

    「概日リズム(サーカディアンリズム)」

    という、およそ24時間周期の体内リズムがあります。

    少し難しい言葉ですが、

    簡単に言えば、

    「身体の中にある24時間時計」

    のようなものです。

    この時計に合わせて、

    ・眠気
    ・食欲
    ・消化
    ・ホルモン分泌
    ・体温

    など、さまざまな身体の働きが一日の中で変化しています。

    米国国立衛生研究所(NIH)傘下のNIGMSも、概日リズムは睡眠だけでなく、食欲や消化、体温などにも関係すると説明しています。

    つまり、

    朝の身体と夜の身体は、まったく同じではない

    ということです。

    では、その身体の中で暮らしている腸内細菌はどうなのでしょうか。


    腸内細菌にも「朝と夜」がある?

    研究では、

    腸内細菌にも一日の中で増えたり減ったりする“波”がある

    ことが分かってきました。

    たとえば、ある種類の細菌が、

    朝は少ない。

    昼になると増える。

    夜になるとまた減る。

    このように、時間帯によって量や働きが変化するものがあります。

    2014年にCell誌に掲載された研究では、マウスだけでなく人でも、腸内細菌に時間帯による変化が観察されました。

    つまり、

    腸内細菌を

    「○○菌が何%いる」

    という一枚の写真のように見るだけでは、本当の姿を捉えきれない可能性があります。

    むしろ、

    腸の中は朝から夜まで少しずつ動き続ける“動画”のような世界

    と考えた方が近いのかもしれません。


    2026年、食事時間を変える研究が発表された

    2026年6月、Nature Portfolioの学術誌
    「npj Biological Timing and Sleep」に興味深い研究が発表されました。

    研究者たちが調べたのは、

    「食べる時間のリズムを変えたら、腸内細菌の一日の波はどうなるのか?」

    ということです。

    実験に使われたのはマウスです。

    マウスは夜行性なので、通常は夜に多く食べます。

    人間でいえば、

    「活動する時間に食事が集まっている」

    状態です。

    そこで研究者たちは、

    その食事を、

    昼夜関係なく3時間おき、1日8回

    に分けました。

    イメージすると、

    通常は、

    夜:たくさん食べる
    昼:あまり食べない

    というメリハリがあります。

    それを、

    昼も夜も、3時間おきに少しずつ食べる

    状態に変えたのです。


    すると、腸内細菌の「一日の波」が弱くなった

    ここが今回の研究の面白いところです。

    通常のマウスでは、

    ある細菌が増える時間、
    減る時間、

    という一日の波が見られました。

    ところが食事を24時間均等にすると、

    その波を持っていた腸内細菌の多くで、朝夜の変化が弱くなりました。

    たとえるなら、

    これまで腸の中では、

    朝・昼・夜でそれぞれ違う曲が流れていたのに、

    食事時間を均等にしたことで、

    一日中、同じテンポに近づいてしまった

    ようなイメージです。

    研究では、腸内細菌だけでなく、腸内細菌がつくる一部の短鎖脂肪酸などでも、時間によるリズムが弱くなりました。

    つまり、

    「何を食べるか」だけではなく、「いつ食べるか」という時間のメリハリも、腸内環境の一日のリズムに関係している可能性がある

    ということです。


    では、規則正しく食べれば腸内環境が良くなる?

    ここで注意が必要です。

    今回の研究を見て、

    「毎日決まった時間に食べれば腸内環境が良くなる」

    と考えてしまうのは早すぎます。

    理由は大きく2つあります。

    1. 今回はマウスの研究

    マウスと人間では、

    生活時間も、
    食べ方も、
    代謝も違います。

    マウスで起きたことが、そのまま人間でも起きるとは限りません。

    2. 「リズムが弱くなった=悪くなった」ではない

    ここも重要です。

    今回の研究では、

    腸内細菌の時間的な波が弱くなった

    ことが分かりました。

    しかし、

    それだけで

    「腸内環境が悪化した」

    と単純に言えるわけではありません。

    健康情報では、

    「変化した」ことと「悪化した」ことを分けて考える

    必要があります。


    この研究から、私たちは何を学べる?

    では、

    人間にはまだ分からない。

    それで終わってしまっては、日常には役立ちません。

    今回の研究から、

    「これをやれば健康になる」

    という答えは出せません。

    でも、

    自分の生活を見直すきっかけ

    にはできます。


    ① 「何を食べたか」だけでなく、「何時に食べたか」を見てみる

    まず1週間だけ、

    ・起床時間
    ・朝食時間
    ・夕食時間
    ・就寝時間

    を記録してみてください。

    難しい健康管理は必要ありません。

    スマートフォンのメモでも十分です。

    たとえば、

    月曜日
    朝食 7:30
    夕食 19:00

    火曜日
    朝食 8:00
    夕食 22:00

    水曜日
    朝食 7:15
    夕食 18:30

    と書くだけです。

    すると、

    「夕食時間が思った以上にバラバラだった」

    「休日だけ生活時間が大きく違っていた」

    など、

    自分では意識していなかったことが見えてきます。


    ② 「正しい時間」を探しすぎない

    ここも大切です。

    健康情報を見ると、

    「朝食は○時」
    「夕食は○時まで」

    といった数字を探したくなります。

    しかし今の研究から、

    腸内細菌にとって誰にでも共通する理想的な食事時刻

    が決まっているわけではありません。

    だから、

    「19時に食べられなかった」

    と気にする必要はありません。

    まずは、

    自分の24時間には、どんなリズムがあるのか

    を見ることから始めれば十分です。


    ③ 腸だけを見るのをやめてみる

    今回の研究で最も面白いのは、

    腸を単独で考えなくてよい、

    ということかもしれません。

    朝、目が覚める。

    光を浴びる。

    食事をする。

    身体を動かす。

    夜になる。

    眠る。

    この間、

    体温も変化しています。

    食欲も変化します。

    腸の動きも変わります。

    そして腸内細菌にも、一日の波があります。

    私たちの身体は、

    それぞれ別々の部品が動いているのではなく、24時間という一つの時間の中で動いている

    とも考えられます。


    健康を「何を足すか」だけで考えない

    私たちは健康のために、

    「何を食べればいい?」

    「何を飲めばいい?」

    「何を摂ればいい?」

    と考えがちです。

    もちろん、食べる内容は大切です。

    でも、

    健康について考える方法は、

    何かを足すことだけではありません。

    朝何時に起きるのか。

    いつ食事をしているのか。

    昼間どのくらい活動しているのか。

    夜何時に眠っているのか。

    そうした、

    自分の一日の流れを知ること

    も、身体を知る一つの方法です。

    世界の研究を知る意味は、

    「新しい健康法を一つ増やすこと」

    ではありません。

    むしろ、

    今まで見えていなかった自分の身体を見る視点を、一つ増やすこと。

    そこに価値があるのではないでしょうか。

    アップワンではこれからも、

    世界で進んでいる研究を、

    難しい言葉を並べるのではなく、

    何が分かっているのか。
    何がまだ分かっていないのか。
    そして私たちの暮らしにどう役立てられるのか。

    まで、できるだけ分かりやすくお伝えしていきます。

    次回は、

    「腸内細菌が“体温を調節する側”になることもある?」

    という、さらに不思議な研究をご紹介します。

    前回の記事:体温が変わると、腸内細菌も変わるのでしょうか?
    https://tera-heat.com/blogs/journal/body-temperature-gut-microbiome


    参考にした主な研究・情報

    ・Hunter FK, et al.
    The importance of meal timing for maintenance of daily rhythms in the gut transcriptome and microbiota.
    npj Biological Timing and Sleep, 2026.

    ・Thaiss CA, et al.
    Transkingdom Control of Microbiota Diurnal Oscillations Promotes Metabolic Homeostasis.
    Cell, 2014.

    ・National Institute of General Medical Sciences(NIGMS/NIH)
    Circadian Rhythms. 2025年5月20日更新。

    ※本記事は公開されている研究・公的情報をご紹介するものであり、特定の疾病の治療・改善・予防、また特定の食事時間による健康効果を示すものではありません。